深い呼吸は、ひっそりとした部屋にそれでもよく響いていて、
その身体が快方に向かっていることを知らせていた。
膝をつき、畳に身体を這わせるようにしてそっと、そっと布団に近づく。
ゆらり、とカーテンが少しだけ翻って、濃ゆい橙が俺を照らした。
そしてまた、静かに眠る彼にもそうしようと。

とっさに、その顔を覆うように、俺は








【そう いつだってゆめはみれる】










うすい目蓋は、閉じられたままだった。鬼よかった。
西日はすぐにまた布きれの向こうに隠れた。じき、沈むはずだ。
目に思い切り入ってきたチカチカを追い出して、一息ついて、俺は気付いた。

自分の今の体勢に。


(ーーーーーッ!!!!!)



慌てて下がろうとしたら、そのまま右手が滑って・・・・・・俺は雲水さんの上に、
へしゃげて乗っかってしまった。


寮の布団が上等なものじゃないことを、俺は今更ながら再度恨めしくなった。
うすっぺらな綿ごしに、その直ぐ下に、雲水さんの身体が、からだ、が!!!
密着してる!当たり前だ、だって今俺は雲水さんに

「・・・・・ん、ぉ、もい・・・」

「すんません雲水さん!おおおお俺オレ引っくり返っちゃって、そんでこんな」


「の、けバカ・・・・ぁごん・・・」


一気にねつが、ひいた。



その掌が俺の手首にくたりと載せられたのに、そうなればとずっと望んでた、
そのままその通りにな  ってい るの   に
このひとのゆめの中で、おれはいまあのひとになってる
まだ熱にういたままなのだろう 融けている灰色、そのこころのなか
なんで、何でだ畜生、どうしてここでそんな、あぁ。


     ハ、ァ・・・・・・


橙も隠れたこの帳のした、少し苦しげな吐息を洩らしたそのくちびるに弾かれて、
俺の意思に反して咄嗟に俺の右手、は

否、



あのざんこくなかみのみぎては


そのひだりてをあやすようにしてとり、包んだ。




すっかりくらやみ色だけになった部屋で、俺は、俺じゃないものになったまま座って眠って、
しばらくしてから、鈍々と自室に戻った。
布団を頭から引っかぶって、目を瞑って、あのゆびの節々や仄かな熱を必死で手繰ってー


ー雲水さんがみだらな声で俺の名前を呼んでくれたところで、ようやっと俺は、俺に戻れた。




【終幕】



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セイゴ様から戴きました素敵一→雲ブン!
みなさんみてくださいこの素晴らしい一→雲を!!
矢印最高だぜ!といわんばかりのもので御座います、非常に癒されました(笑
セイゴ様!このようなギリギリ同盟にご参加いただきまして、誠に有難う御座いました!